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分解整備時の不具合探求(メカニカルシール編)

株式会社テクニカデベロップメント

通常の分解整備のご依頼時でも、常にその不具合の原因を探します。
なぜなら、消耗品の交換だけでは整備サイクルが短くなってしまう場合があるからです。

もちろん、純粋に消耗品が耐用を超えただけという場合が多いのですが、それだけではない場合、何かしらの原因があるはずです。
その原因を除去しなくては、次の不具合発生時期が早くなってしまいます。

今回はそのようなケースとして、「メカニカルシール」についてご紹介いたします。

メカ漏れ

まず、メカ漏れについては以下のようなパターンがあります。

  1. 滲むように、若しくはちょろちょろと出る。
  2. 主軸と直行方向にほとばしるように出る。

1.滲むように、若しくはちょろちょろと出る。

通常のメカ漏れであり、最低限、メカの交換が必要です。

2.主軸と直行方向にほとばしるように出る。

異物噛み、若しくは致命的なメカの破損(割れ等)となり、前者の場合は、ポンプのオンオフで稀に噛みこんだ異物が抜けることがあります。
そして運がいいと、その後の漏れが止まることもありますので、ぜひお試しください。

ただし、三相誘導モータの起動電流は大きいので、ポンプのオンオフは2~3回を目処にしてくだい。
10回、20回とおこなってしまうと、モータコイルに損傷が出てしまうのでご注意を!
その場合は、ポンプの更新になってしまいますよ。

メカの損傷

このように、異物噛みによる起動停止が原因で、漏れが止まってしまった、ある意味で運がいいポンプは良いのですが、問題は以下のようなメカの損傷のパターンです。

  1. 回転環のゴムシールの損傷
  2. 摺動面の荒れ
  3. 摺動面のレコード盤状損傷
  4. 摺動面の偏摩耗

1. 回転環のゴムシールの損傷

このケースは、回転環の内側にある、主軸とのパッキンになっているゴムの損傷です。
これは、経年劣化の他にポンプの空運転が原因な場合があります。

少々見づらいですがこの画像をご覧ください。

赤矢印部分が主軸とのゴムシール部で、痩せてしまっています。
同時に見受けられるのが青矢印部の火ぶくれのような痕です。

これは、メカ周辺が異常高温になったことを示しています。

閉塞運転で30分以上回すか、空運転が原因です。

新品時状態もご覧ください。

左が回転環で、白い部分はセラミックです。
右が固定環で、先端の黒い部分はカーボンです。

セラミック+カーボンや、カーボン+カーボンが、一般的なメカニカルシールのシール部材質です。

このセラミックとカーボンの部分が向かい合わせになって、注水しながら摺動しています。
完全に面の出ている双方同士がピッタリとくっ付き、水を切っているため、止水できます。

ただ、それだけだと温度が上がってしまうのでメカ部には注水が必要です。

また、この画像のカーボンの下の部分にはスプリングが入っていて、多少のメカ同士の据え付け面狂いは追従できるようになっていますが、追従しきれない程に面狂いが出た場合は漏水します。

2.摺動面の荒れ

このケースは、空運転若しくはメカ注水不足・過多が原因です。

新品状態と比べると一目瞭然ですね。

注水不足は主に注水穴の目詰まり。
注水過多は、主に注水穴の腐食による口径の拡大です。(自己注水の場合)

大型ポンプになると変わりますが、今回は触れません。

赤矢印の先端に穴が見えるでしょうか。

この穴がメカニカルシールに注水している穴です。
分解整備時は必ず確認する重要ポイントです。

3.摺動面のレコード盤状損傷

このケースは、異物の噛み込みによる損傷です。
異物の中でもかなり小さいモノで、粒子状のものにより発生することが多いです。

これは水質の問題が多く、稀にストレーナーが無いという施設設備的な問題があったりもします。

まだ初期状態で、レコード盤とまではいきませんが、すじが入っています。
この損傷が進むと、レコード盤のようになってしまいます。
(右側は白飛びしてしまってますが、左側とほぼ同じ状態でした)

4.摺動面の偏摩耗

最後のケースはあまり症例もなく、画像がないのですが、メカの取付時のミスか、固定環のはめ込む位置の腐食による、固定環の傾き設置によります。

この最下部に固定環を設置するのですが、全体的に面が荒れています。
さらに赤矢印の辺りは座が無くなりつつあります。

この程度でしたら、上手く設置すればまだ使えるのですが、この時に設置が上手く出来ないと、メカ漏れや偏摩耗を起こします。

このポンプ(メカの固定環の外側)の止水は、青矢印部分でおこなうため、この面が腐食してしまうと再起不能となります。

そして赤矢印部分において、通常は水が来ない場所にもかかわらず腐食してしまっているのは、メカ漏れが発生してから長期修繕しなかったためです。

この原因によって、ポンプを更新しなければならないこともありますので、ご注意ください。

下の画像は、メカ漏れとベアリングの異音による、オーバーホールのご依頼のものです。
新規購入から5年経過していたので、メカ漏れしても仕方ない時期ではあります。

しかし、分解してみたところ・・・

ポンプ内ではあまり見かけることのない、ナイロン繊維調の異物が多数発見されました

これによってメカに損傷が発生していると考え、ご依頼主に状況を説明したところ、「クーリングタワーからの還水を入れている」とのお答えをいただきました。

このお答えによってピンと来たのは、「クーリングタワーのエレメントの劣化による、部分的なちぎれの流出」です。

この画像でお気づきの方もおられると思いますが、このポンプは荏原のMDPAです。
清水ポンプなので、この水質にも問題があります。

このことから、クーリングタワーの修繕及び水槽の清掃、また可能であれば除毛器や、もしくはストレーナーの設置のご提案をしました。

この水質と異物混入状態では、整備後にいつまた漏水してもおかしくない状態です。

通常の整備の場合でも、純粋に消耗品の劣化以外にも問題がないかを、常に確認しながら整備をおこなっています。

また、外的要因については、システムトータルでの点検や整備を行っていることから、追及が可能です。

弊社では、制御系のご依頼も数多くこなしている経験から、ヒューマンエラーや、制御的な安全装置などの原因についても、追及や改善策のご提案が可能です。

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