現場で“両手解放”へ:スマートグラスが切り拓く工場・倉庫の未来
株式会社リベロエンジニア(以下リベロエンジニア)と、株式会社LIXIL(以下LIXIL)が、工場・倉庫現場における入庫・出庫作業の課題を解決すべく、スマートグラスを活用したシステムを共同開発しました。
この取り組みは、単なる技術導入ではなく、 現場作業者の動きを深く理解し、作業効率と安全性の両立を図った実践的な改善プロジェクト です。
出典: PR TIMES(2025年10月21日、株式会社リベロエンジニア)
※内容は再構成・要約のうえ独自の分析を加えています。
現場課題を整理すると…
LIXILの粕川工場では、入庫・出庫業務に以下のような主な課題を抱えていました。
- 納品伝票の形式が調達先によって異なり、手作業での登録が多発
- ピッキング時に両手を塞がれてしまい、出庫登録の効率が低下
- 倉庫内で在庫の場所を探す時間がかかり、移動・捜索に時間を要していた
これらの「探す・手入力・手作業」といったムダを一掃し、現場の生産性を抜本的に向上させることが目指されました。
スマートグラス導入によるソリューション
主な特徴
リベロエンジニアとLIXILが開発したスマートグラスシステムには、次のような特長があります。
- ハンズフリー操作:両手が塞がらないため、ピッキングや出庫登録時でも作業を中断せずに進行可能。
- 高い安全性:視界の一定位置に情報表示することで、周囲の状況を把握しながら作業できる。
- 直感的な操作性:複雑な操作を排し、誰でも使える分かりやすいインターフェース設計。
- 汎用性の高さ:Android OSを搭載し、将来的に機能拡張や他業務への適用も可能。
開発アプローチ
当初はウォーターフォール型開発でスタートしましたが、現場テストを重ねる中で「使い勝手」や「現場へのフィット感」の課題が明らかになりました。そこで、アジャイル的な進め方—少規模で試し、改善を繰り返す手法—を取り入れ、現場からのフィードバックを反映しながら進化させました。
この現場起点のアプローチが、テクノロジー導入の成功を左右する大きな鍵となっています。
機械修理ドットコムとしての視点:修理・保全・現場改善に効く3つの視点
1. 「作業者の負担」を可視化して削減
修理・保全現場でも、作業中に資料確認・手入力・確認作業が発生すると、それが“手を止める”原因になります。
スマートグラスのようなハンズフリー技術は、機械修理という現場でも応用可能で、作業者の動きを止めずに情報を提示できるという点で価値があります。
2. 「ムダな移動・捜索」の削減
機械保全や部品交換時に、必要な部品の位置を探したり、資料を取りに戻ったりする時間は“ムダ”です。
倉庫・工場の入出庫改善で示されたように、現場で必要な情報を端末操作なしで取得できる仕組みは、修理現場でも効率化の切り札となります。
3. 「カスタム開発×現場適応」の重要性
技術を導入する際、設備や環境は現場ごとに異なります。リベロエンジニアがLIXIL現場に対して“貼り付け”のソリューションではなく、現場固有の課題から設計・改善したことは大いに学ぶべき点です。
修理・保全サービス提供者や設備メーカーとしても、汎用ツールをそのまま導入するのではなく、「現場カスタム」する姿勢が成果を左右します。
今後の展開と期待される方向性
- LIXILの粕川工場では、入庫・出庫業務からさらに「在庫管理」や「出荷業務」へと適用範囲を広げ、さらなる効率化を図る計画です。
- リベロエンジニアはこのシステムを「Libero Sight™」というサービス名で汎用提供し、他社・他現場への展開を目指しています。
- 共同で本システムに関する 特許出願 も実施されており、現場導入・サービス化に向けた基盤が整ってきています。
修理・保全業界でも、このような「現場作業を止めずに進められる情報提示」「ハンズフリーで作業効率を高める仕組み」は、大きな変革となり得ます。
まとめ
現場改善は、技術だけでは成しえません。「人の動き」「情報の流れ」「環境の制約」を深く理解し、それらに寄り添って改善を進めることが肝要です。リベロエンジニアとLIXILの取り組みは、まさにそのモデルケースと言えます。機械修理ドットコムでは、こうした実践的な事例を今後も追いかけ、修理・保全・メンテナンスの現場に役立つ知見をお届けしてまいります。


