軽くて強い、そしてサステナブル ― 冨士ダイスが新合金「サステロイ STN30」を発表

冨士ダイス株式会社が開発した新合金「サステロイ STN30」は、鋼の約4倍という圧倒的な耐摩耗性を誇りながら、比重は鋼とほぼ同等。
さらに、レアメタル使用量を大幅に削減した“次世代の産業素材”として注目を集めています。
出典: PR TIMES(2025年10月27日)
※内容は再構成・要約のうえ独自の分析を加えています。
超硬合金に匹敵する性能 × 鋼並みの軽さ
【サステロイ STN30の主な特長】
- 軽量性:比重は超硬合金の約3/5
- 高耐摩耗性:鋼の約4倍、超硬合金に匹敵
- 省資源化:タングステン・コバルト使用量を最大90%削減
- 高耐食性:従来の超硬合金より腐食しにくい
- 優れた加工性:研削・放電加工が可能
- 磁性あり:磁力選別も容易
これらの特徴により、「軽量」「高耐久」「環境配慮」を兼ね備えた新しい工業用材料として、多分野での展開が期待されます。
鍵となる素材設計 ― ニオブカーバイドの採用
前世代の「サステロイ ST60」では、レアメタル削減を実現したものの、耐摩耗性に限界がありました。
今回の「STN30」では、主成分にニオブカーバイドを採用し、粒子構造を最適化。
これにより、硬度・靱性・耐食性のバランスを高次元で両立しています。
冨士ダイスはこの技術を、超硬合金の代替材としてだけでなく、「環境対応型の新しい生産材料体系」として位置づけています。
想定される用途:軽量化が鍵となる製造分野に最適
「サステロイ STN30」は、耐摩耗性と軽量性を両立するため、以下のような分野での採用が期待されています。
- 回転工具(ミーリング、ドリルなど)
- 混錬工具(樹脂やゴムの混合装置)
- 高回転・高精度が要求される自動車部品金型
- 精密成形・電子部品向け金型
軽くて強い=エネルギー効率の改善にもつながるため、自動車・航空機・電池製造といった「カーボンニュートラル産業」との親和性も高い素材です。
機械修理ドットコム視点
“修理現場の常識”を変える合金
1️⃣ 軽量化がもたらすメンテナンス革命
従来の超硬合金工具は重量があり、交換作業に負担がかかっていました。
STN30の軽量化により、工具交換の安全性・作業効率の向上が期待されます。
2️⃣ 摩耗寿命の延長=ダウンタイム削減
摩耗しにくい素材は、交換頻度を減らし、生産ラインの停止リスクを低減。
修理・保全コストの最小化に直結します。
3️⃣ 環境とメンテナンスの両立
タングステンやコバルトの削減は、地政学リスクだけでなく環境負荷の軽減にも貢献。
修理や更新が少なくなることで、ライフサイクル全体のCO₂削減にもつながります。
展示会情報
この新素材は「第8回[名古屋]オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展」で初出展。
2025年10月29日(水)〜31日(金)、ポートメッセなごやにて公開予定です。
現地では試作部品や加工サンプルの展示も予定されており、自動車産業の次世代素材として注目を集めることは間違いありません。
まとめ:持続可能な“工具革命”が始まる
「サステロイ STN30」は、単なる新素材ではなく、“保全の考え方”を変える合金です。
強さ・軽さ・環境性能の三拍子が揃ったこの素材は、生産設備や工具の長寿命化を実現し、修理・更新コストを大幅に抑えるポテンシャルを持っています。
冨士ダイスの挑戦は、単に“削る材料”を変えるだけでなく、“作る・直す・使い続ける”のすべてをサステナブルにするという、次世代製造業の指針を示しているといえるでしょう。


