フォークリフトが“遠隔操作”で動く時代へ ― 三菱HCキャピタル・椿本チエインらが共同実証開始

物流現場の自動化がまた一歩進化。
三菱HCキャピタル、Nexa Ware、椿本チエイン、ロジスティードの4社は、既存フォークリフトを遠隔操作化する新システムのフィールド実証を群馬県館林市で開始しました。
出典: PR TIMES(2025年10月30日)
※内容は再構成・要約のうえ独自の分析を加えています。
背景:慢性的な人手不足と「現場安全」の両立
フォークリフトオペレーターの不足は、物流業界における深刻な課題。
特に冷凍倉庫などの過酷環境では人材確保が難しく、一方で“無人化”の導入コストや柔軟性の低さが障壁になっていました。
今回のシステムは、既存のフォークリフトにカメラ・センサー・アクチュエータを後付けする方式を採用。
新車を導入せず、既存設備のまま“リモート化”できる点が革新的です。
技術概要 ― 「後付け」で遠隔操作を実現
開発された遠隔フォークリフト操作システムは、車体に8台のカメラと15個のセンサーを搭載。
遠隔地に設置された操作卓から、リアルタイム映像とセンサーデータを用いて操縦できる構造です。
ARアシスト技術も導入されており、カメラ映像上に走行方向・貨物位置などを重畳表示。
操作者はあたかも現場にいるような感覚で、高精度かつ安全に操作できます。
特徴①:既存フォークリフトをそのまま活用
本システムは、既存機体に後付けできる「モジュール型設計」。
これにより、
- 車両のブランドや型式を問わず導入可能
- 他のフォークリフトへの載せ替えも容易
- 資産管理・保守も個別対応可能
という柔軟な運用が可能になります。
物流業界では、設備更新サイクルが長いため、「買い替え不要でDX化できる」点は大きな強みです。
特徴②:AR×カメラで“安全性”を支援
ARアプリケーションにより、カメラ映像上で障害物や走行ルートを可視化。
倉庫内での衝突・接触リスクを事前に回避できます。
加えて、センサー情報から荷物の傾きや高さも検知し、過積載・バランス崩壊による事故リスクを低減します。
機械修理ドットコム視点
フォークリフト整備にも“遠隔保全”の波が来る
1️⃣ 整備・点検の省力化
遠隔化により、稼働データ・操作ログ・センサー診断値をクラウドで一元管理。
これにより、油圧異常・バッテリー低下・アクチュエータ摩耗などを自動検知できます。
2️⃣ 予防保全型の運用へ
従来の“定期点検主導”から、「異常予兆に応じたオンデマンド保全」へ移行。
修理コストを抑えつつ、ダウンタイムを最小限にします。
3️⃣ 人材育成への波及効果
現場オペレーターが遠隔監視センターに移行することで、経験の共有・リスク教育・操作標準化が進みます。
フォークリフト業務が“知的労働化”する流れです。
実証実験の目的
今回の実証では、以下の2点を重点的に検証。
- 機能・性能評価:倉庫内での走行精度・操作遅延・安全性
- 事業性評価:導入コスト、業務効率、運用スキーム
2025年11月〜12月にかけて、ロジスティード館林営業所で検証が行われ、来年度以降の本格展開が見込まれています。
まとめ:フォークリフトの未来は「現場の外」にある
このプロジェクトは、単なる自動化ではなく、“遠隔×保全×安全”の融合による物流革命です。
人が倉庫に入らず、AIと操作員がネットワーク越しに協働する――。
それは“無人化”ではなく、“分散化された安全管理”の時代を意味します。
機械修理ドットコムとしても、この技術がフォークリフト保全・教育・安全管理のDX化を一気に加速させる転換点になると見ています。


