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専門職へのご依頼の勧め

先日ご依頼いただいた「ポンプの分解整備」の状況で驚いてしまった事態がありましたので記事にいたします。

様々な仕事にはそれぞれの専門職がありますね。
ただ、ご依頼されるお客様も各々の専門会社に手配しなくてはなりませんし、勿論、お客様がそれらを振り分けるのではそれそのものが負担になってしまいます。
そのため、当社もそうであるようにある程度の関連のある職種を手掛けることができますし、もしあまりにも専門的であった場合には独自ネットワークにて専門の会社へ協力要請をし、お客様のニーズに応えるようにしております。

しかしながら、確実に専門知識を持ち得ないにも拘らず、作業を遂行してしまった例が今回の記事です。
対象機は、商業施設の空調用の冷水ポンプです。


施工前の外面の状態はさほど問題ありません。


ポンプの軸受のオイルをドレンすると、かなりの鉄粉や異物の汚れがあるようでした。


その主な原因は、ポンプの主軸を抜いた際に明らかになりました。
元々の対象機の形式とは全く異なるタイプのベアリングを適正な処置なしに使用していました。

専門的な言葉で言ってしまうと、オイルバス仕様のポンプなのでオープンベアリングを使用するところに、非接触ゴムシールド付のグリス封入ベアリングを使用。
また、その誤りに気付きながらもシールドを片側のみ取外し、グリスを洗浄することなく、オイルに浸けてあった状態です。

これでは本来の機器の設計値通りの潤滑性能は全く期待できません。


これはベアリングの嵌る場所ですが、縦方向に大きな傷が入っています。
本来、ここにこれほど大きな縦方向の傷は着かないものです。
むしろ、どのように分解・復旧をすればこういった傷がつくものか、悩んでしまいます。


こちらはポンプ主軸とベアリングの嵌合部。
本来、ベアリングの穴の方が主軸の嵌合部よりも2/100mm程度小さいのですが、これを無理に抜き差ししてしまった様で、逆に5/100mm以上、穴の方が大きくなってしまっていました。
これでは主軸の前後の位置が決まらず、能力不足になるかポンプロックの可能性が出てしまいます。
ポンプロックした場合、最悪はモータか制御盤からの出火も考えられます。


これはポンプ主軸にパイプレンチを掛けてしまった痕に見えます。
主軸の回転方向の動きを抑制しようとしたのでしょうが、分解整備時にここには軸方向の固定しかする必要性はなく、回転方向の固定は全く行う必要性はありません。
この行為は構造はおろか分解・復旧等の理解が全くないことを物語っています。
また、ポンプやモータの回転体は非常に高度な加工技術と回転バランスの上に成り立っているものですので、この行為は機械というモノそのものに理解がないということにもなってしまいます。


こちらはモータのベアリングハウジング(清掃後)。
ポンプとモータの芯出し不良により、ハウジングにフレッチング痕が見られます。
フレッチング痕とは、ベアリングの嵌め合い部の不良状態の状況を説明する用語です。
原因としては、振動を伴う摺動が継続的に発生した事が主な理由です。
モータの反カップリング側にこのフレッチングが見られ、分解前の芯出し状況に大きな狂いがあった場合は、芯出し不良が一番に疑われます。


かなりの不良部分もありましたが、各所に於いて必要な部品を交換したり、加工や手入れをすることにより、無事に復旧することができ、復旧後の運転状況の可否を推し量る要素のうちの大きな指針の「全振幅振動値」もJIS規格の範囲内に収めることができました。

今回はだいぶ専門的な内容及び、否定的な文面になってしまいまい、非常に心苦しい気持ちでいっぱいではありますが、この前回整備の傷跡はあまりにも由々き事態だと思い、記事にいたしました。

ご依頼者様側に十分な知識があることは非常に稀で難しいことだと思いますが、依頼検討中に少しでも「おかしいな?」「大丈夫かな?」と思われる節があった場合は、対象業者に「過去に同等の作業を行った経歴があるのかどうか」を確認することをお勧めいたします。

我々、業者としても、お客様の大切な資産の一つである機械を触らせていただく訳ですから、大切に扱いたものです。

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