今回は久々に機械屋らしい案件をご紹介します。
これはお客様へポンプの販売をおこなってから、わずか一ヶ月程で発生した機器トラブルのお話です。
元々馴染みの深いお客様で、普段は施工もご依頼頂いているのですが、その時は何故か機器販売及び現地搬入のみのご依頼でした。
ご依頼は「販売及び搬入のみ、施工は無し」
据付はどうするのかと思ったら、お客様でされるとの事。
そういう事ができる方でも入社されたのかと思いましたが、そうではなく、上司から自分でやるように言われたとのこと……。
弊社「だ、大丈夫ですか……??」
ご担当者「た、たぶん……。」
弊社「機器をちゃんと固定して、芯出しもしてくださいね……。」
ご担当者「できますかねぇ、自分に……。」
弊社「難しいと思いますが、どうしても自分でやれと?」
ご担当者「そうなんです……。」
と、私は当時その上司の方とは直接お話しすることができなかったため、激励と
「できなかったり異変を感じたりしたら、上司を説得して早めにご連絡ください。新規ポンプが再起不能になることもありますので……。」
と言うことしかできませんでした。
一ヶ月後の緊急呼び出し
そんな経緯で新規ポンプを現地納品してから音沙汰がなかったので、てっきり正しく動いているのかと思っていたら……。
一ヶ月程度過ぎた頃に「とにかく来てほしい」との緊急呼び出しが!
駆けつけてみると、この状態。
問題点が山盛りでした。
- 共通ベースが固定されていない(青矢印)
- カップリングゴムが削れて飛び散っている(赤矢印)
- グランドパッキンから適量の水が出ていない
- グランド部に焼けた跡がある
- ポンプ・モータの軸受け部から異音が発生している
グランド部の件に関してはヒアリングしたところ、グランド調整を締めすぎて白煙が出てしまったとの事。
そして、白煙が出たときにグランドパッキンが硬化してしまい、グランド調整を緩めても水が適量出るほどには戻らない状態。
また、芯出し状態を確認すると外周は300/100mm程度、面間は250/100mm程度の大幅なずれが発生していました。
通常の許容値は10/100mmなので明らかな許容オーバー状態です。
(メーカーによって基準が違いますが、許容値は10~20とされている事がが多いです)
ここまで芯出しがずれていると、カップリングゴムが削れて飛散し、症状が進むとゴムが飛び散り、金属同士で動力を伝達するようになります。
そして、カップリングゴムが削れるほどに芯がずれていると、あっというまにベアリングが損傷を受け、症状が進むとベアリングの嵌る相手のベアリングハウジングに損傷が出ます。
こうなると、ベアリングを交換しても異常振動は直りません。
非常に高価な商品の場合は、ハウジングを溶射やスリーブ打ちで直したりすることも可能ですが、汎用の機械の場合は対価費用的に追加部品が必要になったり、更新が必要になってしまいます。
復旧作業
一目瞭然ですね。
10/100mm以内で十分なのですが、この時は5/100mm以内に収まりました。
芯が出ている状態で運転をおこなったところ、既にベアリングに損傷が及んでいたために、異常振動が発生してしまいました。
経験則的に、ハウジングまで損傷が及んでいない程度の振動と思われ、後日(当日は長時間ポンプを止められない状況)ポンプとモータのベアリング交換と、硬化してしまったグランドパッキンの交換を行いました。
異常時にはお早目のご相談を
いろいろと、やむを得ない状況や環境もあるので仕方がないのですが、今回の場合は初期状態から異常振動は発生していたものと思われます。
ご連絡いただくまでに日数が経過していたため、交換部品も多くなってしまいました。
早期の対応で費用が抑えられることが多くありますので、ポンプなどの回転機械に異常を感じた場合お早めにご相談ください。
また、施工状態が思わしくない場合、せっかくの新品装置があっという間にムダになってしまうことがあります。
自信がない場合には、専門業者に施工までまかせていただくことが、結果的に安価に収まり、本来の機能を活かしきることになります。
ぜひその点を踏まえてご検討ください。