今回は加圧給水ユニット用のポンプの分解整備です。
元々の問い合わせは「メカニカルシールからの漏水を直してほしい」という事でした。
しかし、年式が古い事と過去整備履歴がないという事を加味して、メカだけ交換しても近い将来にベアリングを交換しなくてはならない可能性を感じました。
そして、その際はもう一度メカ交換が必要になる事をご案内し、整備費の比較ができるように3種類の見積書を作成しました。
- メカ1台交換仕様
- 1台分解整備仕様
- 2台分解整備仕様
該当機は2台のポンプが設置されているユニットだったので、同日に2台連続で作業を行えばコストダウンが可能です。
それぞれのメリット・デメリットをご案内し、1台分解整備を行うという内容でご依頼いただきました。
2台のうち、片方のポンプのメカニカルシールから漏水が見られました。
運転中のモータの音も、予想どおりベアリングの異音がしています。
このポンプはダイレクト型の中では一番部品点数が多いポンプです。
下手な分解方法をしてしまうとインナーボリュート(画像の中の黒い部品)を破損してしまうので、丁寧に正しく分解します。
ほとんどのダイレクトポンプがそうなのですが、モータを分解するにはポンプ部を分解する必要があります。
メカ交換を行うのにはポンプを分解すれば可能ですが、追ってモータを分解するときでもポンプ部は同様に分解しなくてはならないのです。
さて、問題の漏水していたメカニカルシールです。
この面荒れが起こる原因は様々ですが、ことこのユニットを自動運転しているだけの場合は防ぎようがないのが事実で、消耗品として交換するほかありません。
そして、異音がしていたモータベアリングの状態です。
それにより、内部のころがダメージを受けて振動が発生し、異音につながるのです。
少々見づらいですが、モータの内部のベアリングが嵌る相手のハウジングにも多量に封入グリスが流出していました。
これをさらに長期間放置すると、ポンプそのものを交換しなくてはならなくなりますので、同時作業としていいタイミングです。
節水部は化学物質を使わずに清水で掃除します。
ポンプの節水部の一次清掃後状態です。
この後にもう一度清水にて洗浄します。
ベアリングハウジングは清掃・手入れをし、状態確認です。
損傷はベアリング単体のみで、ハウジングに損傷はありませんでした。
ポンプ部も組立て、モータコイルの絶縁抵抗値を測定。
ポンプをユニットに組み付けて各所の外面塗装の補修塗装を行います。
産業機械の外面塗装は見栄えの問題もありますが、一番の効果は防錆目的です。
塗装の切れ目があるとそこから錆が回ってしまうので、補修塗装は重要です。
本件のように、ご依頼者様が気づかれていない内容でも、ヒアリングを行う事により、長い目でみたコストの削減など、ご提案をさせていただくこともございます。
もちろん、必要に応じてその選択肢のメリットやデメリットも説明しますので、そのうえでご検討ください。
「何もわからないんです」と、申し訳ない雰囲気でおっしゃられる方もいますが、わからないことはしっかりとご説明させていただきます。
「そのために、我々専門業者がいる」と、私は考えております。
中には説明せずに言われたことだけを履行して、すぐに他の不具合が発生しても知らんぷりな業者や、説明せずに追加の作業を押し付けてくる業者もいるかもしれませんが、仕事をお引き受けするからには、説明責任(国会の話じゃありませんが)があると思います。
ありがたいことに、本件のオーナー様から後日改めて御礼のお言葉をいただきました。
「いつまでもこのスタンスを守り続けていかなければ」と、強く肝に銘じる案件でした。