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ポンプの構造と状態に応じた部品選定

今回はポンプの構造と状態に応じた分解整備時の必要部品の選定について、その重要性をお話しさせていただきます。

もちろん、「安心のために何から何まで交換して欲しい!!」と言われれば、ある程度の幅を持たせて多めに選定可能ですが、トータルコストを気にされるケースがほとんどなのではないでしょうか。

見積もり時の部品選定

本件では、ポンプのオーバーホールの見積もりを提出したところ「メーカーの見積もりと選定部品が違うけど大丈夫なのか?!」とお返事いただきました。

ちなみに本件ではもともと、異音の問題でオーバーホールしたいと伺っていました。
必要最低限(危険要素は含みました)で見積もりしたので、「差し支えなければメーカーの選定部品リストだけでも見せて欲しい」と打診し、見せていただくことができました。

すると、流量・吐出圧低下時に交換する部品が載っていました。
客先へそういった事象が確認されているのかどうか伺ったところ、そういった事柄は全く問題ないとの事。

また、機器の構造上懸念される部品が載っていなかったので、そこは交換しないと当日復旧できなくなるか、長い目で見た場合の分解整備の意味が薄れるとご報告しました。
メーカーと当社の相違点は下表のとおり。

見積部品相違点

メーカー当社
ライナーリング×
羽根止ナット主軸に含む
主軸×
封水リング×

各項目の必要性について考えてみたいと思います。

ライナーリング

流量・吐出圧に関する部品であり、異音や振動には関係ありません。
一時的に異物を噛み込むことはありますが、その際は尋常ではない異音が発生するので現地では大騒ぎになります。
また、その症状はそのままロックしてしまうか、一過性です。
一過性の場合は、過ぎた後は流量・吐出圧が格段に低下するのでそのあたりで判断可能です。

羽根止ナット

異音・振動には関係ありませんし、交換が必要なほどに腐食や破損が懸念される場合、主軸を同時交換しないと復旧が危ぶまれます。

主軸

異音・振動には大型のポンプ以外はさほど影響はありませんが、該当ポンプはスリーブの採用されていないグランドパッキンタイプですので、通常のオーバーホール周期時には交換するべきです。
交換しないと、グランド部の摩耗があるため次回整備までの期間で異常漏水の懸念がある他、摩耗が著しい場合、グランドパッキンを交換すると当日復旧が困難になる場合があります。
セットで取れば、羽根止ナットは同梱されています。

封水リング

年式が10年を超えて1度も交換していない場合、材質の劣化の懸念があるため交換しておきたい部品ですが、該当機は4年程度ですので清掃のみで問題ありません。

このように、部品の選定基準が怪しげでしたので、その旨申し出て、メーカーと同じ内容にしてもかまわないが、無駄な部品がある他、場合によっては復旧に問題が出るか、ごく短期間で再不具合が発生する可能性があると伝えました。

その後ご理解いただき、弊社仕様にてご発注いただきました。

オーバーホール工程

施工前

防振架台のポンプベース真下に強い腐食があり、その影響もあって芯出しが非常に狂っている状態でした。
そのため、べアリングの異音がかなり大きくなっており、ハウジングの摩耗が心配です。

ポンプ・モータ取外し

羽根車に問題はないようです。
同時にライナーリングにも問題は見られませんでした。

ポンプ分解完了状態

軸封からの異常漏水が長く続いたために周辺の錆がひどい状態です。

軸封水受け部

周囲への飛び散りが激しいです(異常漏水過多だったため)。

軸封部

こちらは、グランドパッキン仕様としては通常の状態です。

主軸軸封部摩耗状況

復旧不能まではいきませんが、次回整備時期までもつかどうかは危ぶまれる状態です。

ポンプベアリングハウジング

芯ずれによるダメージが見られます。
矢印の位置の線はもともと無いもので、ベアリングの外輪の幅に摩耗してしまっている事が見て取れます。
これは、次回整備時に交換必須として報告を上げる他、弊社で過去履歴として残します。

芯ずれにより偏摩耗してしまったカップリングゴム

これは、通常でも摩耗する部品なので交換するのですが、偏摩耗している事が芯ずれしていたことを物語ります。

モータ分解完了状態

モータ内部の損傷は消耗品のベアリングのみに留まっていました。

新旧交換部品

ポンプは細部までケレン清掃や修正・手入れを行い、接液部は錆止め塗装(FC部のみ)を行い、組み立てます。

ポンプ組付け後

組付け後に補修塗装ができなくなってしまう場所のみ、先行で塗装してあります。

芯出し調整

ダイヤルゲージやピックアップゲージを使い、芯出し調整を行います。
メーカー推奨値はこの機器の場合20/100mm以内となっています。
運行時間に応じてずれていくことがありますので、弊社で芯出し調整を行う場合は通常は10/100mm以内に調整します。

弊社で芯出し調整を行った場合、下図のような芯出し調整記録を発行します。

施工完了状態

モータ整備中にも行っていますが、起動前にも絶縁抵抗値測定を行います。

オーバーホール作業から見えてきたもの

試運転中に気づいたのが、ポンプの吐出バルブを大きく絞っている事。

開度50%以下です。
吐出を絞るのは、流量が多すぎるからです。
ということは、ライナーリングや羽根車の摩耗損傷はないという事になります。

圧力に関してはバルブを絞っても抑えることはできませんので、完全に流量の問題になります(ただし、送り先の配管内やろ過タンクに異常な詰まりなどがある場合は、流量を落とせば圧力は下がる傾向になります)。

このバルブの開度による圧力変化の度合いでも、砂ろ過タンクのろ材交換の時期を考察することはできますが、これに関しては経過年数による通常運転時の圧力変化の推移を見る方が正しく読み取れます。

このように、様々な運転状態から必要な部品の算定は可能ですので状態把握をすることが、正しい交換部品の選定に繋がります。

ご依頼時、「関係ないかもしれないけど……」といった事柄でも構いませんので、お聞かせいただければ最適な対策を提案させていただきます。

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