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ポンプの状態診断から修繕まで

今回は、下記のような内容でご依頼を承りました。
修繕前に機器の状態診断を行い、それをもとに修繕を行った案件です。

初期ご依頼概要

対象の施設は数年前に別系統のポンプの修理をさせていただいていたお客様で、「今回は他の機器が調子が悪いと思うが、今修理するには夜間作業になってしまうので、この夏を乗り切れるかどうかの判断をして欲しい」との事でした。

さっそくアポイントを取ってお伺いし、対象ポンプに案内していただくと、機械室に入った時から、そこそこの異音が聞こえてきました。
ただ、確かに異音はするが、実際にどこの場所から発生しているのかは解りづらい状態でした。

早速データを取ります。

データのジャンルとしては下記のようなものになります。

  1. 電流値
  2. 軸受温度
  3. 軸受の全振幅
  4. 軸受の速度・加速度
  5. 聴診

これらの数値をもとに状態を判断し丁寧に説明させていただきます。
結果としては、「ポンプは今夏は乗り切れそうだが、モータは最短での修理が必要」という状態でした。

そして、診断にお伺いする前に調査しておいたのですが、対象機のモータはもう手に入れることのできない型式でした。
IE1からIE3へ変更された時に消滅してしまったキロワットと枠番の組み合わせのモータだったのです。
そのため、モータ単体を更新しようにも不可能であり、ポンプごと一式更新しなくてはならないのが実情です。

45kwのモータなので、単体でもおおよそ80万円程度しますし、ポンプまるごとだと、商品代で200万円弱くらいしてしまいます。
その上400kgほどの防振架台の更新も必要になる状態でしたので、工事費も相当な費用になります。
そのあたりの諸々全てを加味して、現在使われているモータを大事にしていきたいと考えました。

完全にベアリングが破損して、ハウジングに損傷が発生した場合、溶射によって復旧することは可能ですが、ブラケットをお預かりして「溶射」→「研磨加工」に一週間ほどかかってしまうので一日も止められない機器の場合は不可能となります。
取り急ぎ、モータのみ大至急で夜間の分解整備をおこなうことになりました。

作業工程

施工前

モータ移動・カップリング取外し

一番異音の大きかった反負荷側のベアリング状態

封入グリスが流出しきっていて、カラカラという感じの音がしていた他、流出グリスが焼けて張り付いています。

この見た目、ハウジングに損傷が及んでいる事が多い絵面ですが、清掃してみないと真偽のほどは解りません。

ブラケット側状態

清掃後状態

僅かに損傷は見受けられますが、ほぼ機能上問題はないギリギリの状態でした。
勘合部の寸法測定を行い、許容値内に入っているか確認します。

許容値ギリギリの部分が1カ所ありましたが、今後ダメージを与えない限りは問題ありません。

ハウジング測定

主軸測定

交換部品

モータの消耗部品は基本的にベアリングのみです。
(今回はポンプのカップリングボルトを同時交換)

しかし、そのベアリングに損傷が発生すると、あっというまに損傷状態が悪化して再起不能になる事が多いのも事実です。

今回は施設の機械担当者様の異音に気づいた点と診断をご依頼されたこと、そして診断内容を真摯に受け止め、修理にGOを出してくださったことがこのモータの命をつなぎました。

あと半月~1ヵ月使っていたら、修理不能か、溶射処理が必要な状態になっていた事でしょう。
素晴らしい判断だったと感銘しました。

モータ組立後、試運転です。

外面の補修塗装を行い、施工完了

各数値はほとんどが正常値になり、1カ所の1方向のみやや数値が大きめでしたが、ポンプの方の振動を受けている可能性があるため問題なしとしました。
(全振幅は1つの軸受けで3方向計測します)

普段から機器の様子を感じ取ることが重要

対象機の休止期間に入り次第ポンプの分解整備を行う予定です。
それまではなんとかポンプの異音が急激に大きくならないことを祈るばかりです。
(数値的には順当で今夏はもつと思われるのですが、心情的にはやはり心配です)

このように、現地で毎日機器を見ている方の感じることは、専門家でなくとも重要な事が多いのです。
少しでも疑問や不安を感じることがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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