今回は配管に関する特殊なご要望の内容です。
まずは、現地を拝見させていただきました。
この装置は、し渣の脱水機(湾曲配管部が脱水機)なのですが、ピストンの能力が落ちてしまい、し渣を管端まで押し出すことができなくなってしまったそうです。
原因は、おそらくVリング等の摩耗(経年劣化)による圧縮抜けかと思われます。
このような状況では、通常はピストンを修繕することが理想的です。
ですが、来年度この機械全域を更新することが決まっているそうで、長くても一年間だけ何とか排出できるようにしたいというのが今回のご希望でした。
ピストンの押し出す力が弱ってしまった場合、押し出す距離を短くしてあげるのが効果的です。
実際、この装置の場合も湾曲配管の頂点部分までしか押し出せていない状況です。
先端の方の上部の配管は外してしまって問題ないそうですので、その方向で解決策を探っていくことにしました。
まず、簡単に思いつくのは頂点部のフランジで配管を外し、エルボ管を取り付ける方法です。
ただし、この方法ではいくつか支障が発生することが考えられます。
「ピストンの能力が更に低下した場合の対応」について
現在、押し出しきれないし渣を、管端口で棒を使って掻き出していることが分かりました。
構想の通り、頂点部から先の配管を外してエルボ管にした場合、当初は問題ないと思われます。
ところが、後々さらにピストン能力が下がった場合にまた掻き出す必要が出てくるのでは……との危惧があり、通常の90度エルボ管にしてしまうと掻き出すことができなくなるという支障がありました。
そこで、90度ではなく45度ロングエルボを用いることで、この問題を解決することにしました。
「脱水能力が低減されることによるし渣の飛散」について
湾曲配管自体が脱水機ですので、距離が短くなることによって排圧が下がり、脱水能力が低下します。
そのため、押し出されるし渣の含水率は高くなり、その分飛散しやすいという懸念があります。
加えて、湾曲配管を頂点部で終わらせることにより、排出口の位置が高くなることも飛散の要因になります。
「し渣は従来通り下部に設置したBOXに落ちる仕様にしたい」とのことなので、し渣の含水率が高くなった場合に飛散しないよう、ダストシュートを用意することにしました。
既設の架台に取り付けると排出口まで距離が出てしまうのでゲタをはかせて近づけることで解決を図ります。
製作品
右が新たな吐出口の製作品、左がダストシュートです。
塩ビ製で製作できればよりコストと納期を抑えることもできましたが、今回は場合によっては圧が高くなるということでしたので、金属製で対応しました。
ちなみに、配管口径は200Aです。
ダストシュートはアングルで枠組みをして、フラットバーでビニールシートを挟んで止めてあります。
設置工程
現場は地下でそこそこ深いため、資機材搬入は開口部からホイストを使用させていただきました。
もちろん、安全帯の使用・有資格者作業です。
200Aの配管ですからそれなりに重量があります。
門冶具とチェーンブロックで取り外します。
撤去部分を取り外して、管端フランジ面を清掃。
清掃したフランジ面に新規製作した45度ロングエルボを取り付け。
ダストシュートは今後の状態に合わせて容易に移動できるよう、クランプ止めとしました。
試運転を掛けてもらい、問題なくし渣が下のダストシュートに落ちることを確認しました。
これで、一年間は問題なく稼働できると思われます。
アイデア出しから力になります
今回は、お客様の方も「これを、こんな風に使いたいんだけど、何かアイデアと方法を考えてくれないかなぁ?」というお話しです。
そういった案件でも、今までにかかわったモノなどから極力お力になれたら……と、思っております。
お気軽にご相談ください。