不具合のご連絡でよく上がってくるのうちの一つに、メカ(メカニカルシール)とグランド(グランドパッキン)からの漏水があります。
ただし、これらに関しては必要以上に気にされる方と、全く気にされない方の両極端なように思われます。
双方とも、軸封という役割の部分で、ポンプケーシングの中と外で主軸が刺さっている部分の液体の隔壁の役割をしています。
メカから多量に漏れて、ケーシングカバーが朽ちていても気にされない方もいれば、漏れ跡があるというレベルの状態で「今日中に直したい」とおっしゃる方もいて、かなり感覚の幅があるようです。
もちろん、不具合は早く直した方がいいのですが、軸封から多少漏えいがあっても、一日を争うような状態ではありませんので当日対応が難しい場合はその点ご説明させていただいております。
但し、漏えい過多状態を長期間放っておくと、ポンプ本体の腐食が進み、交換部品は増えていく一方なほか、腐食が進むと整備不可となる事も多く見られます。
さて、メカとグランドの特徴を上げていきましょう。
比較的多い例で挙げます。
メカニカルシール | グランドパッキン | |
---|---|---|
正常状態 | 1滴も漏れがない | 1秒間に1~2滴 |
漏れ調整 | 不可 | 可能 |
交換サイクル | 2~3年 | 調整しきったら |
経年劣化以外不具合 | 異物噛み・空運転 | 調整不良 |
上記時状態 | 飛び散るように吹く | 全くでないor多く出る |
漏れ修繕 | メカ交換 | グランド+スリーブor主軸交換 |
不具合放置 | 周辺の腐食 | 焼き付き/周辺の腐食 |
見比べれば見えてくるのが、メカはメンテナンスフリーな代わりに交換サイクルが早い事。
それに対して、グランドは漏れ調整を行ってさえいれば、交換サイクルが長い代わりに交換時の費用が高いというですね。
どちらも一長一短ではありますが、グランドは常時ある程度の漏えい(潤滑目的)があるため、ドレン配管が必要なうえに、どうしてもケーシングの腐食が一定量発生してしまうということです。
ここ数年で、ポンプメーカーの標準仕様も徐々にグランドからメカに代わってきています。
これは、一般的にグランドタイプのポンプは漏れ調整が行われておらず、ポンプ本体の腐食が著しい個体が多く見られるためではないかと思います。
又は、現場設備の簡素化や運転管理の簡素化のためだと思います。
不具合事例詳細
メカ:経年劣化以外の不具合事例
- 異物の噛み込み
- 空運転によるゴムシール破損
- 空運転によるカーボン・セラミックの破損
- キャビテーションによるカーボン・セラミックの面荒れ
グランド:経年劣化以外の不具合事例
- 調整不足による漏れ過多
- 調整締めすぎによる潤滑不良
- 青矢印がグランド仕様のグランドパッキン部分
- 赤矢印がメカ仕様のメカニカルシール部分
矢印部分に、メカ若しくはグランドが入ります。
(共通図面の為絵柄は表現されていません)
グランドタイプのポンプ
- ひし形の金色の部材がグランド押えといい、これを左右のナットで締めることによりグランドが主軸にきつく当たり、漏水量を減らすことができます。
- グランド押えがポンプ本体にくっつくまでいってしまうと、それ以上の調整はできず、修繕が必要となります。
- 必要以上に占め込んでしまった場合、液体によるグランドの潤滑ができなくなり、白煙を上げます。
その後、温度上昇によりグランドが炭化。
主軸(若しくはスリーブ)への攻撃が高くなり、短命となってしまいます。
新品のグランドパッキン
漏水が激しかったグランドタイプポンプの修繕例1
修繕前
修繕後
漏水が激しかったグランドタイプポンプの修繕例2
修繕前
修繕後
メカニカルシールタイプのポンプ
メカニカルシールは多種多様あり、紹介しきれませんので汎用の安価なものでご紹介します。
基本的にメカは止水面の材質がカーボン/セラミックか、カーボン/カーボンのものがほとんどで、止水面に異物はもちろん、皮脂が着いただけでも漏れが発生してしまうため取扱には注意が必要です。
新品のメカ:梱包状態
止水面:これはカーボンとセラミックの仕様
固定環:青 カーボン
回転環:赤 セラミック
劣化が著しく、使用限界を超えたメカニカルシール
同一品新品
メンテナンスの目安
メカの場合:
漏れが発生したら、なるべく早く修繕
グランドの場合:
調整代が残りわずか若しくは漏水が調整できない状態になったら、なるべく早く修繕
こういった感覚で対応していただければ、無駄な交換部品が発生せず、通常の消耗品のみで整備が可能です。
参考にしていただければ幸いです。