ポンプの不具合:第6回 フレッシャー(加圧給水ポンプユニット)
今回はフレッシャー(加圧給水ポンプユニット)について書いていこうと思います。 まず、最初に言わなければならないのは、「フレッシャー」という名称は実は荏原製作所の商品の固有名詞です。
俗に、油圧式トラッククレーンユニットの事を「ユニック」と総じて言ってしまうのと同じレベルです。
有識者の方々はもちろんご存知でしょうけれども、俗に「フレッシャー」と言った方が伝わり易いのでは?という、敢えての題目です。
関係者の方々や、さらなる誤解を助長している……と、思われてしまっておられます方々に、ここで釈明とさせていただきます。 さて、本題に入っていきます。
加圧給水ポンプユニットは非常に便利で、必要な施設には普遍的に設置されているモノですが、小型のものはあまりに小さいスペースに詰め込まれているため、いざ故障表示や不具合が発生しても、原因の追究が難しいのではないかと思います。 今回は、一般的によく見られる小型のユニットに基づき、各部の働きを考えていきます。
それぞれの役割や構成が解らなければ、不具合の原因はおろか修理対象部分の算定は不可能となりますので、ここから始めていきます。 あまり深く追求すると、それだけで連載を何回も行ってしまう内容になりますので、さわり程度にまとめていきます。
上のユニットは受水槽方式→減圧弁方式→ポンプ2台の仕様のユニットです。 最近ではインバーター方式も増えつつありますが、設置されている稼働機では減圧弁方式がまだまだ多く見られます。 「減圧弁方式とインバーター方式の違いは何か」と、言いますと、

- 第一に、省エネ化。
- 第二に、ポンプ出力の緻密なコントロールにより、「末端圧力の一定給水(推定)」と「ポンプの保護コントロール」に優れている事。
各部の名称と役割
さて、各部の名称と役割を綴っていきます。- ポンプ 言わずと知れた液体を送る装置です。
- 制御盤 加圧給水装置専用の制御盤がついています。 制御系が全て入っており、他の盤などに依存することなく独立して運転するようになっています。
- 圧力タンク 配管内の瞬間的な圧力変動を内部のダイヤフラムと封入空気により吸収し、ポンプのインチング運転を防止します。
- 減圧弁調整弁 減圧弁の調整機構部であり、減圧弁の逃がし開始圧力を調整します。
- 減圧弁(内部) ポンプの吐出圧に左右されないよう、一定の圧力を配管に供給します。
- 逆止弁(内部) 供給配管や別号機からの戻り水を防ぎます。
- フロースイッチ 送水状態を管理しています。
- 圧力スイッチ(背面) ポンプの発停を制御するために供給管内圧力を計っています。
よくある不具合と症状
それではポンプと制御盤以外でのよくある不具合と症状を考えていきましょう。 ◎圧力タンク- 封入空気の圧力が抜ける タンク内はダイヤフラムにより水の部屋と空気の部屋を隔てています。 ダイヤフラムの初期の位置を保つために空気の部屋は送水設定圧力と均衡する空気圧を封入しています。 これが抜けてしまうと、供給配管内の圧力変動を吸収する幅が非常に少なくなり、ポンンプの異常発停が増えてしまいます。 放置すると、ポンプモータのコイルに損傷が起こります。
- ダイヤフラムの破損・劣化 ダイヤフラムが破損・劣化すると、供給配管内の圧力変動の吸収がほぼできなくなり、封入空気の抜け状態よりも激しいポンプの異常発停が発生します。
- 調整弁のダイヤフラム損傷 調整弁のダイヤフラムが損傷すると、設定圧力到達前に吐出圧がポンプの吸込み側に戻されてしまい、送水不能状態になります。 ※調整弁フランジ部から漏水があり、且つポンプに問題がないのに送水できていない場合疑います(稀に漏水が見られない場合もあります)。
- 減圧弁の動作不良 常時使っているものにはほぼ発生しませんが、長期停止していた場合などで、減圧弁のスライド機構部にスケール等がたまり、動作不良を起こすことがあります。 ※調整弁からの漏水が無く、送水圧力が安定しない・送水できない場合に疑います。
- 逆止弁に漏水が発生 搭載ポンプが1台の場合、ポンプの休止時間が極端に少なくなります。 (加圧給水ユニット以外に逆止弁を設けている場合は症状は発生しません。)
- ポンプを複数台搭載しているユニットの場合 漏れ量と搭載ポンプの能力によって、ポンプが止まらなくなる。若しくはポンプが次々と起動するという状態になります。 (加圧給水ユニット以外に逆止弁を設けている場合はポンプが止まらなくなる可能性はありますが、次々と起動する症状は起こりません。)