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ポンプの不具合:第4回 電流値・過電流

株式会社テクニカデベロップメント

今回は、ポンプの電流値・過電流にまつわるお話です。
今回も一般的な遠心ポンプを想定しての内容になります。
また、供給電源の問題を視野に入れてしまうと問題が非常に複雑になってしまうので、ここでは供給電源の異常がないものとして考えていきます。

世の中に設置されている大多数のポンプは電動機によって動作していることから、ポンプと(電動機の)電流値の関係性は重要です。
場合によって、ポンプの不調状態を推し量る重要な要素となります。

電動機には定格電流値があります。
その定格に対してどれだけの値が出ているかで、情報が引き出せます。

「機械的な問題が発生していない」と仮定した場合の、一番簡単な例でいくと下記のように分類できます。

  • 電流値が定格の半分以下 → 空運転
  • 電流値が定格の半分くらい → 閉塞運転
  • 電流値が定格以上(過電流) → 流量過

基本的に、ポンプ(送風機には完全には当てはまりません)の場合、羽根車の仕事量(流量)に比例して電流値が増減します。

よく、吐出バルブの開度を調整していて、過電流が出たからと言ってバルブ開度を増やす・・・という話を聞きますが、これは間違いです。
ポンプは同一条件化では、流量が多くなればなるほど電流値が増大するので、過電流が出た場合はバルブ開度を絞るのが正解です。

閉塞運転に関して

試験運転などで閉塞運転を掛ける場合(配管系統がポンプの締切圧に耐えられる前提)、電流値の心配をする必要はありません。

閉塞運転自体は、極端な振動が発生しなければポンプに負担はありません。
(大型・大流量のポンプは、閉塞運転時に大きな振動が発生します)
但し、長時間閉塞運転をすると、内部の液体の温度が徐々に上がってしまいます。
(長時間の場合、沸騰することすらあります)
そうなると、羽根の裏側で真空を引いてしまい、キャビテーションが発生してしまいます。

キャビテーションが発生すると、ステンレス以外の材質には非常に攻撃性が出てしまうので、その点だけは注意が必要です。
(正確には、ステンレスもダメージを受けますが、極微量です。また、SUSやSCSの種類によっても程度は変わります)

空(から)運転に関して

空運転時は、電流値が定格の半分から3分の1程度になります。
空運転は、軸封部に対して非常に危険がありますので、即停止が望ましいです。

グランドパッキンの場合は、白煙が出たり、軸封の硬化等が発生し、主軸に対して継続的な攻撃が発生したり、軸封能力の低下(過度の漏水)が発生したりします。

メカニカルシールの場合は、カーボンが焼けてしまうか、回転環のシール部のゴムが溶けてしまい、多量のメカ漏れにつながります。

過電流に関して

過電流は、ポンプの場合は基本的に過流量を指します。
ポンプ選定時にかなり大きなマージンを取って選定していたり、全揚程が非常に少ない場合にしばしば発生します。
また、ポンプ吐出口の配管口径がすぐに大きく膨らませてあり、且つ全揚程が非常に少ない場合にも発生する事があります。

その場合は、吐出のバルブ開度を絞る(吸込みのバルブで調整は厳禁)ことが一先ずの対処となります。
それでも収まらない場合は、ポンプの羽根車のダイアを調整するか、能力の低いポンプに変えることが望ましいです。
(ダイアサイズ=圧力  厚み=流量)
ただ、これには大きな落とし穴があります。
明らかに異常なほどの振動や異音がしている場合、回転体の回転に抵抗が発生している事があります。
この場合は、過流量ではなくとも、過電流が発生する事がありますので、まずは整備が必要となります。

また、過電流が長く続くと(通常は保護回路により停止する)、モータコイルの異常発熱などにより、コイルの絶縁不良が発生したりして、モータコイルの損傷につながるため、軽視はできません。

様々な不具合による電流値の変化の傾向

機器状態電流値
ライナーリングの摩耗下降
羽根車マウスの摩耗下降
羽根車翼の腐食・欠損を伴う破損下降
羽根車ダイヤ減少を伴う腐食・破損下降
配管系統の詰まり・閉塞下降
機器状態電流値
ベアリング内部錆上昇
ベアリングリテーナー破損上昇
ベアリング球の破損上昇

上の表を見るとわかりますが、流体に関わる部分の不具合は、全て電流値の下降方向。
機械的な不具合は、全て電流値の増加傾向となります。

但し、機械的な部分の不具合による電流値の上昇(下降する場合も一時的にはあります)は、ベアリングに起因する事が多く見られ、ベアリングの不具合により電流値が上がるというのは、ベアリングが破壊寸前の可能性が高いため、早急な対処が必要になります。

また、流体に関わる部分の不具合は、全てポンプの能力低下が発生していることが読み取れます。
これは、正常時の吐出圧・流量の変化と、電流値の変化を併せて判断するのが望ましいです。

この連載でたびたび出てくるのが判断基準の大きな要素として、該当機器の通常時の状態把握です。
それらが明確であればあるほど、より緻密な状態把握が可能になる・・・と言うことです。
現地の機器担当者様の継続的な管理があってこそ、状態判断が可能になるのです。

参考図

軸動力(kw)は、電圧が一定ならば電流値(A)と置き換えて読んでも支障はありません。

渦巻ポンプの電流値は、基本的にポンプの仕事量(吐出し量)により変動する特性が大いにあります。

参考図

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