ポンプの不具合:第3回 異音・異常振動
今回は、異音と異常振動についてお話ししていきます。
もちろん、異音・異常振動はポンプの危険信号ですので早い段階で整備を行うことにより、トータルコストの削減に繋がります。
ところが、何でも早め早めに整備をしていたのでは本当の削減にはならないという部分が、悩みどころだと思います。
一口に異音や異常振動と言っても、その原因は多岐にわたりますし、どのレベルで異常とみなすのか・・・若しくは整備が必要なのか・・・と、いう問題が発生します。
一般的には、普段から機器を見られている方が、いつもと違ってきたと感じたらほぼ、異常だと思っても差し支えないです。
据付状態や配管経路などによってもその機器の通常時の状態が違うからです。
他には、電流値や圧力などの推移で推し量ることも可能ですが、異音・異常振動に関してだけ言えば、電流値にまで変動が出る場合、再起不能な事が多いです。
我々が診る場合、聴診棒と呼ばれる道具を使って聴診をしたり、手で触れて確認したり、吐出バルブを絞って音や振動の変化などから診断します。
また、その根拠を数字で出すことを求められる場合、振動計やベアリングモニターや騒音計を使い、数字を元に診断します。
振動計
振動体の全振幅を計測
ベアリングモニター
振動体の速度・加速度を計測
騒音計
機器の騒音を計測
ただし、先にも言った通り、機器の個体によって通常時の数字は違います。
これは、なにも製品誤差という意味ではなく、前述のとおり据付状態・周辺配管等によって変わるからです。
なので、些細な微変動に関してはその機器個体が健全である(ハズな)状態の時から、定期的に点検していないと解りえない事です。
ただ、この数値にも一定の基準がありまして、機器の回転数によって基準値があります。
これに照らし合わせて、大幅に数字がオーバーしているような場合は、やはり「異常」と、診断します。
定期検査(通常1年に一回)などを行っていれば、微妙な数値の変化を元に異常と判断される前の前兆を見出し、異常状態に突入する前に的確な整備が可能になります。
しかし、これは公共物件やそれに準ずるようなライフラインに関わるような機器でしか行わない(行えない)のが実情です。
往々にして、異常が発生してから我々は現地にお伺いし、極力短期間に極力低コストで整備することになります。
その時に、いかに対象機の個体の状態を把握し、且つ過去事例からどういった整備内容で行った方がトータルでコスト削減できるかを考える事が必要になります。
異音について
異音の原因を分解しましょう。
勿論、必ず下記のように仕分けられるわけではないですが、よくあるパターンになります。
異常振動について
次に異常振動ですが、これに関してはほとんどが軸受系のトラブルです。
ただ、問題はどこまで損傷が及んでいるのか・・・と、いうところです。
これは異常振動に気づいてからの期間と振動の大きさで判断するしかありません。
ときおり、吸込み不良を起こしていたり、流体の問題によるものも見受けられますが吸込み不良に関しては電流値で確認できます。
流体の問題による物なら変動は基本的に出ないので以前より、同レベルで発生していた経緯があるのが通常です。(流体による固有振動数の共振で異常振動が発生する場合があります。)
その他には、羽根車のバランス狂いや、過流量による振動も発生する事はありますが、相対的に稀です。
回転機器にとって、異音・異常振動は8~9割ほどの確率で機械的トラブルが原因です。
異音や振動が増幅してくる前に、整備をしないとある一定期間から加速度的に症状が悪化し、通常の消耗品では対処できなくなりますので修繕費用が増大する前に整備されることをお勧めします。
参考資料
【ケース1】
あまりに酷使するとリテーナー(玉の保持器)が破壊され、シールドが吹き飛んでしまいます。
【ケース2】
【ケース3】
芯出し不良によりカップリングボルトのゴムが無くなってしまい、金属同士の接触により動力伝達していたポンプ
【ケース4】
上記モータは異音が発生したまま長期間運行し、ベアリングが破壊された瞬間に回転体がロック。
その直後に過電流によりモータの各部通気穴から火を吹いたそうです。