蒸気弁不具合時の構造による対処
日頃からお取引をさせていただいている、あるお客様からお問い合わせいただきました。
弊社が普段担当している機器とは別のものに対するお問い合わせです。
蒸気弁の不具合が発生していて、とあるメンテナンス会社に見積依頼したところ、不信感を抱かれたようです。
「蒸気弁から異音がしてて、メンテ会社に見積依頼したら部品交換のみで直すという回答で、しかも異様に高いんです。ポンプ屋さんなのは解ってるけど、こういうのやってもらえます??」
という問い合わせでした。
異様に高いという部分は、見積内容と価格を見ないとなんとも判断できませんが、「蒸気弁の不具合を部品交換??」と思い、詳しく聞いてみました。
お客様からの報告と画像を送ってもらうと、おおよそ解ってきました。
不具合・お問い合わせ概要
今回の機器は、温浴施設のスチームサウナに使用されていたもので、下記が要件となります。
- 使用蒸気弁は蒸気用電磁弁
- 通電開
- 昇温時にビビリ音
- 昇温が遅かったり設定温度まで上がらなかったり
- お客さんが少ない時は稀に上がりすぎることもある
- 蒸気弁設置状況がいわゆる地獄配管
- 元の見積りでは弁本体以外を交換する仕様
赤矢印が対象です。
これは配管を組める業者じゃないと蒸気弁交換はできませんね。
そこで、なんとかしようと、弁上部だけの交換を考えたのでしょう。
電磁弁で通電開で昇温時にビビリ音というのは、間違いなく電磁コイルの劣化です。
弁上部に電磁コイルがありますから、それは間違いではありません。
ただ、お客さんが少ない時にオーバーシュートするということは、下記のいずれかが要因で蒸気漏れしているという事が考えられます。
- 内部スプリングの劣化
- 弁体の劣化
- 弁座の劣化
そして、蒸気ですから攻撃性は高いので、弁座の劣化も十分考えられますし、今は問題なくとも上部だけ変えた場合、上部の次の寿命よりも前に間違いなく下部が劣化します。
それを考えると丸ごと変えてしまった方が賢明ですし、総工費も格段に安くなります。
(特に小さい電磁弁なので部品より商品の方が安い可能性が高い)
また、設置状況が地獄配管※なので、配管を組める業者でないと交換できません。
※地獄配管=今回の場合は弁だけを取り外せない仕様の配管取り回し
配管を組める業者としては当たり前ですが、弊社も可能です。
通常の見積りを行ったところ、元の見積りより安いといわれました。
会社毎に得手不得手がありますから何とも言えませんが、できないものはできないと伝えるのも誠意ではないかと思ってしまいます。
ちなみに、弊社で弁上部のみの交換をする場合、部品代+2/3人工程度で、あとは消耗雑材・交通費・諸経費といった事になります。
今回は配管の組み換えがあるため、2人工で考えました。なので額面で安いはずがないと思われたのですが……。
何はともあれ、お客様に喜んでいただき、よりお客様の得になるのでしたらこれ以上いい事はありません。
即答でご発注いただきましたので、部品を入手して、作業開始です。
修理工程
保温材をはがしたところ。
壁際にユニオンが入ってました。
ただ、これだけでは取り外せないので周辺配管を切除して撤去します。
電磁弁なので多少の電気配線もあります。
完全撤去後です。
しかし、既存の配管は白(SGP-W)ですね。
内部の亜鉛が蒸気で溶け出すので通常は使わないのですが…
撤去品です。
赤矢印が弁本体で、真ん中の黒い輪っかの部分が弁座です。
ここが劣化すると蒸気漏れが発生します。
よく見ると、弁座に蒸気による腐食が見られました。
やはり、ここを交換しないとすべての不具合は収まりません。
配管組立中です。
今後の周辺の電磁弁の交換も容易にするため、配管の取り回しを若干変えてユニオンを増やしています。
配管敷設後&結線後
電線の長さの制約により、端子箱は斜め設置です。
もちろん、事前想定されましたので許可をいただいてます。
試運転確認をして、蒸気漏れ及び制御状態の確認後、保温復旧です。
最後に網を巻いて施工完了です。
様々な業務をワンストップで
ポンプ屋なのですが、付帯配管等の施工も行うため、この程度の配管作業は全く問題なく行います。
また、対象施設の今後の維持管理なども考えてのご提案が可能で、試運転確認などすべてお任せいただいております。
お困りのことがありましたらぜひご相談・お声がけください。