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締結機 巻き取り専用爪の製作

株式会社茂呂製作所

お客様より、「製品を番線で自動に締める装置が上手く動かないので見て欲しい」とのご依頼を頂きました。
幸い近隣だったのでお話を伺うと、番線が機械の中で外れてしまうとの事です。

伺ったときは、生産作業が終了しており動いているところは拝見できませんでしたが、装置内部を詳しく見ることができました。

今回の装置の特徴

この装置は、製品を圧縮して縮めたところを番線で自動締結する装置です。
特殊な用途で使われており、製作メーカー様は設置場所や用途に合わせて特注仕様で生産しているようです。
今までは、部品が磨耗した際に製造メーカー様より部品を入手して、お客様が交換されていたそうです。

今回は、消耗部品がもうメーカー様より調達できなくなったとの事でお声掛け頂きました。

ちなみに番線とは、針金の種類であるナマシ番線の略称で、鉄線に熱処理を加え焼きなましたもので軟質となっているものです。
通常の針金よりやわらかいため、捻じって締め付ける作業に向く素材です。

対処法の検討

今回の締結機において、番線が装置内で外れやすくなるのは、番線を引っ掛ける爪が磨耗したためと判断しました。

理由としては、お客様が所有していた新品の爪と使用中の爪とでは明らかに寸法が異なっていたためです。
また、お客様の経験からも「爪が磨耗すると起きる症状」とヒアリングできました。

しかし、今回は消耗品である爪がメーカー様から入手できないとの事なので当社にて製図・製作することとしました。

修理工程

製図・製作する部品をお客様からお借りします。

この際に装置を拝見して、部品に求められる用途・加重等を調査いたします。
そうすることによって精密に仕上げなければいけない箇所、逆にラフ加工でも良い場所を見極めます。
そのことにより必要な機能を満たしつつコスト低減を図ります。

会社に戻り、部品から設計図を作成いたします。

今回の部品は複数の曲線より構成されておりますので苦労しました。

採寸が間違っていないかを確認する作業です。

1分の1サイズでプリントアウトした型で同一性を確認いたします。
複数の曲線が重なり合っているため何回か微調整をおこない完成しました。

最後に材質の選定をおこないます。
今回は、大きな力が加わりながら番線が爪の上を滑っていきますので、耐摩耗性と強度が要求されるだけでなく、形状から折れにくさも要求されます。

それらを勘案して、鉄の中のSCM材の浸炭焼入れ処理を選定しました。
折れにくさは、粘り強さと置き換えられます。
一般的なS50C材料に、焼入れ処理では耐摩耗性と強度は得られますが、粘りがなく大きな加重が加わったときにポキンと折れてしまいます。

今回選定したSCM材の浸炭焼入れ処理では粘りも得られるので最適と判断しました。

製作には約2週間のお時間を頂きました。
装置では複数の爪が使われていましたが、まずは1つだけ製作し、実験をしていただきました。
数日間稼動しても問題がないとご判断いただけたので、全数の製作をおこないました。

部品交換後、番線が外れるトラブルもなくなりスムーズに生産できるようになりました。

作業を終えて

当社では、複雑な形状の部品も採寸・製作することが可能です。
部品が入手できずにお困りの際には、まずはご相談ください。

磨耗する部品は、できるだけ早く採寸することが大切です。
磨耗した部品では元寸法が分からなくなり同一形状に再生できなくなります。
そのときに製作する必要がなくても、数年後必要になった時のために製図をしておけば安心です。

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